ジャストシステムの転職サイト『ピタジョブ』のユーザー行動観察事例。競合ひしめく領域で優先すべき考え方とは?

ジャストシステムの転職サイト『ピタジョブ』のユーザー行動観察事例。競合ひしめく領域で優先すべき考え方とは?

本記事では、関連したサービスを運営されている方に共通する悩みや課題を発見することを目的として、話題のサイトやモデルケースになりそうなサービスでユーザビリティテストを行った事例を共有します。

今回は、「一太郎」や「ATOK」で有名な株式会社ジャストシステムの転職サービス【ピタジョブ】を対象に課題発見事例をご紹介します。競合性の高い領域において、サービスの特徴をユーザーに認知させるには何が重要かを調査しました。

調査結果では、サービスの強みを打ち出すためにどんなサイトでも気をつけられる以下の課題点が発見されました。

▼対象サイト
ピタジョブ | ぴったりが見つかる転職・就職・求人情報サイト

今回のユーザビリティテストの発見点

発見① ユーザーは自分の求めている情報を的確に・迅速に手に入れることに“しか”興味が無い
発見② ユーザーと同じフレーズや言葉で会話しなくては気付かれない
発見③ 独自の強みは、随所で紹介する必要がある

以下で実際に行ったユーザビリティテスト設計と、発見点・考察を詳しく解説します。

ユーザビリティテストの目的

転職サイトは大手から小規模のサイトまで数多あり、それぞれが差別化を目指してユニークな取り組みを行っています。
今回調査対象の「ピタジョブ」もジャストシステムの技術力を活かし、職歴や年収を元に求人との『ピッタリ度』を算出してくれる優れた機能で、他サービスとの差別化を図っています。

昨年9月にブロガーのイケダハヤトさんからも紹介されています。

今回の記事ではピタジョブを通して、競合性の高い分野でサービスの強みをユーザーに認知させるにはどういった取り組みが必要かを調査しました。どういった点でユーザーが作り手の思惑と反してつまずいてしまっているのかといった課題点に加え、どのような改善方針が望まれるかを考察として提示します。

サービス紹介

ピタジョブの強みは以下のように打ちだされています。

サービスの強み

  • 企業サイトでしか探せない求人も掲載(求人情報数の多さ)
  • こだわりやわがまま軸などの多彩な切り口からの仕事探し(検索の利便性)
  • 企業・求人データの見える化(比較やマッチングの機能性)

ピタジョブでは2016年2月時点で掲載企業数1万8千近くと、最大級の掲載数を誇り、切り口も「ベンチャー企業の求人」や「安定企業の求人」など他の転職サイトにはないユニークなものが多く存在します。
中でも三点目の機能が特徴的で、会員登録後プロフィール設定をすれば、求人すべてが『ピッタリ度』という独自の指標によって比較・レコメンドされます。

ピタジョブの『ピッタリ度』

ピタジョブの『ピッタリ度』はユーザーの経歴・スキルとどれだけ合致しているか算出します。
会員登録すれば設定したスキルや希望条件が、求人との「ピッタリ度」を計測してくれます。

今回『ピタジョブ』を選んだ理由

今回は転職業界というレッドオーシャンの市場の中にあって、一般的な転職サイトとの違いが明確である点から調査対象としてピタジョブを選びました。サービスの強みを訴求するところで思わぬ落とし穴にはまっていないか検証し、課題点を抽出します。

以上のように、今回のユーザビリティテストでは、多く存在する転職サイトの中でピタジョブの3つの特徴がユーザーに認知されているのか、されていない場合はどこに問題解決のポイントがあるかを調査していきます。

ユーザビリティテスト設計

サイトを利用してみると、独自の強みを持っているにも関わらず、訴求を阻害する導線設計や会員登録への誘導など、いくつかユーザビリティ上気になる点が存在します。

例.会員登録

ピタジョブでは応募するをクリックすると、会員登録登録画面にいきなり飛んでしまう現象が存在します。
会員登録をした後でなければ、ユーザーはピタジョブの機能を多くは利用出来ない仕組みとなっているため、いかにユーザーを登録に誘導出来るかがユーザーを離脱させないかの鍵となります。

にも関わらず上記のような課題も見受けられるので、今回は以下の問題仮説を立てた上で、それぞれをユーザーの行動から検証していきました。

強みが伝わっていない問題の仮説

    1. 求めている求人情報が手に入らず、会員登録する前に離脱するから

【取りうる改善案】求人検索の利便性向上

    1. サービスの紹介方法がユーザーに刺さっておらず、会員登録してまで使ってみようと考えないから

【取りうる改善案】説明内容の変更 or 説明方法の変更(動画など)

    1. 会員登録を説明したページや箇所の設置箇所が不十分なため、会員登録せずに離脱する

【取りうる改善案】機能説明ページへの導線の設置

以上が立てた仮説の一覧と、各仮説が当てはまった場合の改善の方向性となります。
今回の被験者のリクルーティングは、転職サイトでの能動的な行動を把握するため、今まさに転職活動中の人を募集し、そこから業界や過去の経験をもとに絞り込みました。

ユーザーには上で立てた仮説を検証するための行動をとってもらう必要があるため、対面式のユーザビリティテストと同様に、タスク設計を事前に行いました。
本テストでは、ユーザーがどのような行動を自然に取り、どのタイミングでサービスの強みに気付いているのか観察することを目的としたため、以下の4つの段階に分けてサイトを自由に回遊するようタスク設計をしました。

タスク設計

  1. まずTOPページから自由にみる(ユーザーの行動の把握)
  2. 求人を探す(サービスの機能性の確認)
  3. 会員登録のメリットを調べる(サービスの強みの訴求)
  4. ログインして利用する(最初との印象の違いの把握)

今回テストで使用したデバイスはSP(スマートフォン)のみで、手元で操作するところを撮る形で数名のテストを実施しました。

今回は、『サービスの強みの訴求』という観点からの発見が多くありました。

発見① ユーザーは自分の求めている情報を的確に・迅速に手に入れることに“しか”興味が無い

今回はテスト設計でも記載したように、転職を現状考えている情報への積極性が高いユーザーを集め、TOPページからサイトの利用を開始させました。そんな中、全被験者共通してまず行ったのが、求人の検索条件の確認です

全被験者はTOPページの中腹の「興味から探す」欄と、希望条件から求人を探す欄にまず遷移し、そのまま求人一覧ページの絞り込みページへと遷移し、条件を変更していくことで自分に合った求人を探そうと行動をしていました。

ユーザーがまず向かった求人検索欄

ピタジョブの求人検索機能「興味から探す」
下のテスト結果にもある通り、他にも求人の検索絞り込み機能の使いやすさと、絞込結果が自分の求めているものとどのくらい合致しているかを最重要視している行動が目立ちました。
以上から、まず利用してもらうためには強みの訴求に注力するのではなく、ユーザーの本来求めている価値を提供することが第一に求められることが調査の結果から判明しました。

今回は転職サイトでしたので、自分の納得する求人を探しだしてくれるサイトかどうかという、転職求人検索の「信頼性」が非常に重要視されていました。

テスト結果(発見点の一部)

  • 条件で絞り込んだ後、多くの被験者が右上の「変更」のアイコンから絞り込めることに気が付かなかった。
  • 求人案件が一覧化される際、絞り込み条件によっては同じ企業の求人案件ばかりになってしまい、何ページか遷移しなくては別の企業の求人情報にたどり着けなかった。
  • 検索結果で一つ一つの求人情報が少なく、求人詳細まで踏み込んで見なくてはならないため、絞り込み条件を設定し直す行動が目立った。
  • 「興味から探す」は好印象だったが、職種・業種に関しては絞り込みのカテゴライズから探すことが難しかった。
  • 探しても自分が求めていた求人一覧が出なかった場合は、探すことをあきらめようとする動作が目立った。

絞り込みによって自分の想定していた求人一覧と異なる検索結果が出てしまった時が、ユーザーからの不満が一番多く出た箇所でした。

発見② ユーザーと同じフレーズや言葉で会話しなくては気付かれない

ユーザビリティテストで求人案件同士を「比較できたら」と発話していた人は複数いたものの、いずれもピタジョブの「マッチング機能」においてそれが実現出来ると理解出来たユーザーはいませんでした。
同様に、気になる求人をチェックしたいユーザーもいましたが、「クリップ機能」に気づくことがありませんでした。

例.求人詳細ページに存在する「マッチング機能」のバナー

求人詳細ページに存在する「ピッタリ度」のバナーリンク
これらからユーザーは「マッチング」や「クリップ」という言葉から何が出来るのかを連想できていない可能性が高いことが考えられます。ヒューリスティック分析で言われる「システムと実世界の調和」が今回生じている可能性が高いです。
※「システムと実世界の調和」とはユーザーが本当に使っている言葉を使用すべきであるというルールであり、言葉の使い方や情報の提示方法を実世界に準拠すべきだとする考え方です。

つまり今回は「マッチング」や「ピッタリ度」というフレーズがユーザーの普段使っている言葉と異なっており、馴染みのあるフレーズや言葉を使われていないため、ユーザーが気づけていないと考えられます。

Webサービスなど多くの媒体でその業界で使われがちな用語は必ずしも一般ユーザーに響く言葉やフレーズかどうかはわかりません。ユーザーの属性や年齢層を把握し、その上で彼・彼女たちが普段用いる言葉遣いをすることが、馴染みのないサービスを理解させる第一歩なのです。

「システムと実世界の調和」が実現できている例

システムと実世界の良い例として「買い物カゴ」の表現が挙げられます

テスト結果

  • それぞれのページに含まれる会員登録への導線を見ていたものの、まだ会員登録の必要性を感じないためクリックしようとはしなかった。
  • 「マッチング」だけでなく「ピッタリ度」などの用語がそれぞれで使われているため、会員登録のイメージがつかない
  • ○%の表記が何を指しているのかわからず、特に使いたいとは思わなかったという発言が目立った。
  • 「クリップ機能」が目に入っているにも関わらず、「気になる求人があったがどこを押せば保存すればいいのかわからない」という発言があった。

発見③ 独自の強みは、随所で紹介する必要がある

上の発見点2の通り、現状「マッチング」や「ピッタリ度」という言葉ではユーザーが認知していない、ニーズに“刺さっていない”ため、あまりクリックされないことがわかりました。
その一方で機能紹介ページへの導線面でも課題が見られます

一例を挙げると、「マッチング」や「ピッタリ度」などの機能面を説明するバナーが求人詳細ページ内に配置されていますが、一度会員登録をしたユーザーのリンク先は下図のように会員登録・ログイン画面となります。

例.「マッチング」のリンク導線

バナーリンクからだとログイン画面へと遷移します

今回のユーザビリティテストでは、発見点2の理由からバナーに興味を示さずに見過ごしてしまう場合がほとんどでしたが、それだけでなく機能紹介が十分にされないままログインや会員登録を必要とさせるプロセスも、ユーザーに不快感を示させる原因となっていることがわかりました。

ユーザーにとって知りたいのはサービスを利用するメリットであり、会員登録はそのための手段でしかありません。まずは機能が説明されたページへの導線が、適切なページに存在することが必須事項と言えます。

考えられる解決策

解決策として考えられる施策としては、いきなり会員登録に結びつけるのではなく、個々の機能を紹介するページを用意すること、そして適切なページに「~~とは?」というテキストで誘導されたユーザーの質問への応答形式のリンクを設置するなど、一つ一つのユーザーの不満・モヤモヤを解消してあげることが望まれます。

▼参考サイト:終身死亡保険のシミュレーション | アクサダイレクト生命保険
わかりづらい概念は問答形式でやさしく解説するリンクを設置することが重要(例.アクサ生命)

ユーザーにとって会員登録は自分の欲求を満たすための手段であり、登録するほどのメリットを丁寧に説明しなくては、どれだけ簡単な登録手順だとしても会員登録する必要性を感じられません。

また今回はユーザーに会員登録をするタスクも用意されていましたが、会員登録後も機能の具体的な利用方法を把握していないユーザーの行動が目立ちました。そもそも「ピッタリ度」を計測するためのプロフィール登録で躓いたり、指標がどの程度信頼に足るものなのかわからなかったりしていたことからも、会員登録後のサービス説明も、各ページ内で拡充することが望まれます。
求人情報ページの「ピッタリ度」を利用していないユーザーが多く見られました。
指標の読み方だけでなく、指標の信頼性に関しても疑問が浮かんでいるユーザーが多く存在していました。

テスト結果(発見点の一部)

  • バナーの存在は認知していたが、会員登録という文言からクリックしようと思わなかったユーザーが多く存在した。
  • 会員登録した後も、どこを見ればピッタリ度が把握出来るのかわからないという行動が見られたことからも、ピッタリ度がそもそも何なのかが理解されていなかった。
  • ピッタリ度の概念は何となくは理解できるものの、果たして信頼出来るのかわからないため、活用することに積極的なユーザーは存在しなかった。

結論・まとめ

ユーザビリティテストを通して、上記のような課題とは別に以下のようなポジティブな印象もユーザーからはヒアリング出来ました。

  • 情報が豊富で全て客観的なデータなため、信頼できる
  • 色やデザインなど全体がすっきりしたトーンでわかりやすい
  • 求人検索の切り口が面白く、使いたいと思う
  • コンテンツも充実していて読みたくなる

課題発見点①の通り、転職サイトを利用するユーザーにとって一番の関心事は、自分の探したい・見たい求人に辿り着きやすいか否かです。

ピタジョブは「興味から探す」など面白い切り口が存在し、かつ求人件数も多いのでユーザーのニーズを満たすサービスではあるものの、絞り込み検索結果の妥当性や、ナビゲーションの配置などの使い勝手の部分でユーザーに不満を持たれているケースが多く存在し、そこをPDCAのサイクルを回すことで改善していくことが求められます。

競合性の高い分野において、多くのWebサービスでは競合サイトからの差別化を狙いその個性や強みを強調することが多々見られます。ただし今回のユーザビリティテストからも分かる通り、サービスの機能性や特徴はユーザーの持つ本質的なニーズを叶えてくれる一手段でしかありません

ユーザーにとってまずは使いやすい・求めている情報が見つけやすいようサービスを設計し、なおかつ強みの打ち出しは発見点2・3から分かる通り、適切なタイミングで、ユーザーの言葉に合わせた導線で紹介することが望まれます。

今回は転職サイトを取り扱いましたが、その他の業界にも同じことが言え、ユーザーの本質的な欲求にまずは向き合うことが望まれるというのが今回のユーザビリティテストから得られる一番の学びです。普段からサイト改善を社内で行われている方もこうした本質的な認識を見落としがちかも?と少しでも思う方は、是非一度ユーザビリティテスト(行動観察調査)の実施をご検討ください。

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著者紹介

梅田 晃啓(うめだ あきひろ)
梅田 晃啓(うめだ あきひろ) (SEOユニット)

慶応義塾大学卒。大学在学中からWebコンサルティング事業部でSEOの基礎を叩き込まれる。入社後は一年目から大手ECサイトやメディアサービス、転職求人サイトなどを担当。SEO戦略設計や運用改善はもちろん、コンテンツマーケティングの企画にも携わる。現在は、寄稿やセミナーなど、社外への情報発信にも力を入れている。大学時代はお笑い全国大会優勝経験あり。

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