"店長ブログ"がCVに効く!「NOMOOO」「KURAND」が見つけた実店舗とオウンドメディアの連携

連載「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」第9回は、ベンチャー酒屋を掲げるリカー・イノベーション株式会社のオウンドメディア運用について、辻本編集長に話をうかがった。

「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」連載一覧 Vol.1スペースを通じて「新しい体験を売る」~”活用事例集”としてのオウンドメディア「BEYOND」
Vol.2LINEをコンテンツ作りに活用、700超のQ&Aで毎月30人の新規獲得に貢献する「町田美容院の知恵袋」
Vol.3マーケティングは理屈より、人と人とのコミュニケーション~飲食店オーナーを支援する「Foodist Media」
Vol.4「決定者が多いと、つまらないものしかできない」BAKE阿座上さん・塩谷さんに聞くオウンドメディア成功の秘訣
Vol.5インタビュー記事で理解を深めて送客を実現、学生ライターの教育にもこだわる「STUDY HACKER」事例
Vol.6アサヒビールがオウンドメディアで挑んだ、内外とのコミュニケーションの活性化
Vol.7“純度の高いコンテンツ”が結果を生む!DODA「”未来を変える”プロジェクト」の徹底的な環境づくり
Vol.8「予約ラボ」が数字ではなくユーザーを追い続けたことで得られた意外な成果
Vol.9 ”店長ブログ”がCVに効く!「NOMOOO」「KURAND」が見つけた実店舗とオウンドメディアの連携

お酒の通販事業で立ち上がった同社は、日本酒100種が時間無制限で飲み比べできる実店舗のKURAND SAKE MARKET(クランド・サケ・マーケット)をはじめ、3,000人を動員した日本酒イベントの開催など多方面でファンとの接点を構築している。検索で上位表示される記事やSNSで拡散されるコンテンツを数多く展開し、「考えられるコンテンツ施策はほぼやり尽くした」という運用でお酒の情報メディアNOMOOO(ノモー)は月間150万PVにまで成長した。しかし、4つのサイトを運営する辻本編集長が今もっとも注力しているのは店長によるブログなのだという。なぜ今、店長ブログなのか? その目的や背景、コンテンツ制作の仕組みなどについて紹介していこう。

 

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「あなた×お酒をもっと楽しく」をコンセプトに掲げるNOMOOO(ノモー)は月間150万PVのメディアに成長

 

もっともCVに効くのはバズでも検索でもなく”店長ブログ”

――リカー・イノベーションで展開されているオウンドメディアについて教えてください。

一般のお酒が好きな方に向けたNOMOOO(ノモー)という情報サイトのほかに、店舗と連動したサイトを3つ運用しています。日本酒に特化したKURAND(クランド)、梅酒と果実酒のSHUGAR(シュガー)、焼酎のHAVESPI(ハベスピ)と、それぞれが実店舗のサービスに合わせた専門的なコンテンツを配信しています。

――4つのサイトにはどのような違いがありますか?
最初にオープンしたのがNOMOOOでした。「あなた×お酒をもっと楽しく」というコンセプトで、外部のライターにも幅広く情報発信に協力してもらっています。中心となるのは「外で飲む」「家で飲む」の2つのカテゴリで、外で飲むは飲食店やイベント、地方へ出かけてお酒を飲む体験談などのレポートが中心です。一方の、家で飲むはカクテルやおつまみのレシピ情報とか飲んだお酒の感想などを掲載しています。
KURANDは日本酒の飲み比べができる実店舗のKURAND SAKE MARKETと連動しています。KURAND SAKE MARKETは池袋を筆頭に渋谷・新宿・浅草・大宮の5店舗があり、同様にSHUGARとHAVESPIは各2店舗を展開しています。それぞれ3サイトが日本酒・果実酒・焼酎というお酒の専門的な情報を、内部スタッフが発信しています。

 

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リカー・イノベーションが展開する4つのオウンドメディア。NOMOOO以外は実店舗と連動している

 

――サイト展開の背景を教えてもらえますか?
NOMOOOが本格スタートしたのが2013年ごろで、目的としてはお酒の通販につなげるユーザーを集めるためでした。当時はお酒に特化したメディアが無かったということもあって、キュレーション記事やまとめコンテンツなどWebで検索できる二次情報を参考に発信を続けているうちに検索エンジンから評価されるようになりました。
検索流入が増えて、今では150万PVを獲得するサイトになっています。その後、2014年に日本酒飲み比べイベントを開催するようになり、2015年に飲み比べできる実店舗のKURAND SAKE MARKETをオープンして、ネット以外でも直接ユーザーとつながりを持てるようになりました。これによってEC以外にもイベントと店舗という3つの収益の柱ができました。

――最近、特に力を入れていることは何でしょう?
日本酒に特化したKURANDで、店長たちにブログを書いてもらうようにしていることです。店長がブログを書くって珍しくないことだと思われるかもしれませんが、検索で上位表示される記事やSNSの拡散を狙った記事をやりこんできた我々としてはけっこうチャレンジな企画でした。
やっぱりプロのライターさんが書いた記事は内容もしっかりしてますし、それは今もNOMOOOの集客の柱になっています。ただKURANDの店舗への来店予約というコンバージョンから分析したときに、店長ブログを見たユーザーのCVRが高かったのです。
最初こそ反応は無かったのですが、内容についてフィードバックを重ねていくことで彼らの記事の質も高まって、徐々にCVである店舗への予約数も伸びています。

 

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店長ブログはKURANDの5店舗をはじめ、姉妹店のSHUGARとHAVESPIでもほぼ毎日更新されている

 

――店長ブログを始めるきっかけは何かあったのですか?
はっきりとしたものは無いのですが……店舗を増やしていくにあたって目標を決めようとしたときに、予約数とクリック率をKPIに設定しました。でも、どうやったら数値が改善できるのか正直わからなかったんです。そこで仮説として、店舗ごとの特色を出したほうがリピーターのユーザーに対して来店を促すきっかけになるんじゃないかと。じゃあ文章は下手かもしれないけど、店長ブログを始めてみようと踏み出すことになりました。

――やはり最初は、苦労されましたか?
とりあえず書いてもらおうとスタートしたんですけど、編集部が求めているものとぜんぜん違う内容の原稿だったりして。編集のしようがないというか……お手上げでした(笑)。

――「今日はラーメン食べました」みたいな日記になってしまっては意味がないですしね。
店長たちはまったくメディアに関わったことのない人間ばかりだったので、文章力以前の問題でしたね。
ただ、何を書くかの事前打ち合わせと、書いてもらった後に私が編集した記事のフィードバック、さらにサイトへ掲載した後のユーザーの反応や予約がこれだけ入ったという数字を共有していくうちにどんどん向上していきました。特に何を書くかについては、「どうしたらお店にきてもらえるか?」「ラーメン食べたという記事でお店にきたいと思ってもらえるか?」を細かく何度も確認してイメージを詰めてきました。

 

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日本酒とコンビニのお菓子をマリアージュするなど意欲的なブログ記事が来店意欲をくすぐる

 

――かなりの頻度で更新されてますね?
店長ブログは基本的に毎日更新しています。飲食店でここまでブログに力を入れているっていうのは珍しい方だと思います。ビラを何枚配りました、広告をどこに出しましたというのが普通の業界ですから。ただ、飲食店って客商売なので暇な時間が必ず発生します。その空いてる時間を有効活用してできることで、しかも商品知識や店長たちの情報発信力もつく、さらにお客様にも喜んでいただける。ブログをやらない理由がないんですよね。

――店長たちから「面倒だ」みたいな反発は無かったのでしょうか。
ぶっちゃけキツイって話は聞きます。でも、店舗での接客と同じくブログの更新も大事というフィードバックをこまめに行うことで互いの意識のすり合わせができたので、理解してもらってます。あと、当初の仮説以上に成果としての数字がついてきてるので、店長たちも店舗への集客にはブログの更新が欠かせないという意識が芽生えて、自然と更新頻度が上がってます。これはうれしい誤算でした。

 

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客と一緒の写真をブログ記事に加えることで、店舗の雰囲気が伝わってくる

 

――ブログのルールとして決めていることはありますか?
先ほど話した更新頻度と提出期限のほかに、営業中の空き時間を使うということ、公開後のPVとCV数を共有すること。あと細かいことを挙げると必ずお酒の写真を入れることや、店の雰囲気が伝わるようなお客様と一緒の写真もできるだけ入れること、店長は必ず実名・顔出しで原稿の内容に責任を持つということくらいです。あまり細かいルールを作りすぎると彼らもやる気が失せてしまうというか、書きにくくなります。だから、基本はアドバイスして「次回はこうしましょう」というフィードバックを中心に取り組んでいます。文章力とかは、編集でなんとかできますしね。いちばん重要なルールは「お客様が来店したくなる内容で書く」ということです。
最近では店長ごとにキャラも出てきて、ある店長は日本酒とつまみのマリアージュ(食べ合わせ)を試し続けたり、別の人間は日本酒の味わいや知識を英語で表現したりとかしていて。それぞれにファンもついています。

 

文章執筆に慣れていないスタッフにブログを書いてもらうためのルール

  • 原稿の提出期限を明確にする
  • どの時間で書くかを決める
  • 記事公開後の成果(PVやCV)を共有する
  • 目的に沿った写真を必ず入れる
  • 誰が書いたかを明らかにする
  • 読者に何をしてもらいたいのかを意識して書く

 

店長ブログがユーザーの来店を促し、好循環を生むきっかけに

――サイトの訪問数とCVの予約数がともに上がっていく良い循環ですね。ユーザーのペルソナはどのような傾向がありますか?

私たちは「ベンチャー酒屋」を目指してますから、もともと日本酒やお酒のマニア向けというよりもライトな層というか、「銘柄は詳しくないけど美味しいお酒が飲みたい」くらいの方々に向けてコンテンツを発信しています。そのライトな層が日本酒を好きになってもらえるきっかけになる店でありたいというか。

――コンテンツもライト層をターゲットとしたものが多いのでしょうか。
NOMOOOはライト層ユーザーを狙ってますね。「日本酒にあうチーズはどれ?」とか、わかりやすいことが重要です。自然検索で上位表示されている記事やソーシャルで反響を得た記事が多く、流入全体の半分以上が検索からです。
一方でKURANDは、マニアックな層に向けた日本酒の蔵元さんのインタビュー記事を「another life」さんと協業で展開したり、「どこの日本酒専門店も同じような銘柄しか置いてない」といった少し物議を醸しそうな記事を掲載したりもしています。この層の流入経路は主にソーシャル、特にFacebook寄りなイメージですね。それぞれのサイトで実店舗やイベント、ECの存在に気付いてもらいCVに至るという流れです。
そこに店長ブログが加わることで、自然とお店への来店やリピートのきっかけが作れているようです。

 

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各オウンドメディアと店長ブログの役割イメージ

 

――「肉に合う日本酒」や「飲む和菓子」など、独自の日本酒も開発されてますね?
「毎週1つは新商品を出そう!」と、蔵元さんに協力してもらって実店舗に並べてます。こちらからお願いして造ってもらうことが多いですが、実は蔵元さんから「このお酒、どう売ったらウケると思う?」と相談されることもあります。
店長たちも含め、私たちはお客様の顔を見ながら商売してますからね。その反応を見ながら提案もいろいろとできますし。リピーターのお客様を飽きさせないように、新商品以外にも新しい提案を次々と進めていきたいです。

――今後の目標はありますか?
飲食店が運用するオウンドメディアで成功事例といえば……と挙げられる存在になりたいですね。あと、Webからの予約だけで満席となるようにしたいです。
私たちの店舗はビル内のわかりにくい場所にあることが多いので、Webサイトからの集客が肝です。KURANDだけでも総来店数の約50%はオウンドメディアから来店いただいていますが、もうひとふんばりかなと。ただ、サイトからの予約数計測をするようになった半年前は今の1/3にも満たなかったので、まだまだいけると思ってます。

 

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チョコレートやチーズ、肉料理に合う日本酒など独自の新商品が毎週のように登場する

 

――最後に、あなたにとってのコンテンツマーケティングとは何でしょうか?
上手く言えないのですが……知られてなかったことを知ってもらう機会をつくるというか。「世の中から評価されてなかったものを、Webサイトで提案することにより新しい魅力を発見してもらうこと」でしょうか。
日本酒を生産する酒蔵は全国に1,500社くらいあるのですが、多くは年間生産量が1,000石(*)以下の小規模な蔵元が中心です。普通に酒屋や居酒屋で見かける銘柄は全体の一部でしかなくて。それが非常にもったいないなというのが我々の考えです。一生懸命に造っている日本酒が飲んでもらう機会すら無いのですから。
KURANDという場所なら今まで出会ったことのない日本酒を発見できる、知らなかった楽しみを味わえる、そういうお手伝いができる。そのための情報発信を一生懸命にやっていたら、まわりから知らないうちに「それがコンテンツマーケティングだ」と呼ばれるものだった、というのが正直な感覚ですね。

*1石=180L 1,000石=一升瓶10万本分
(参考)清酒製造業の概況(平成25年度調査分)清酒製造業者数の推移|国税庁
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/seishu/2013/pdf/01.pdf

Editor's EYE

リカー・イノベーションが展開するオウンドメディアはどれもベンチャー精神にあふれている。「お客様に飽きられないように」と辻本編集長はサラッと言うが、日本酒の新商品を毎週のように店頭へ並べるというのは、そう簡単なことではない。蔵元との強い信頼関係が構築できているからこそ実現可能なことだし、店長たちもその意気に触れて客がより楽しんでもらえるような提案をブログに発信している。「お酒にもっと新しい価値を」と立ち上がった会社が、たった3年でイベントや実店舗へと事業拡大を続けている原動力は、その共通の想いにあるのではないだろうか。
「コンテンツマーケティング」という言葉が広告に代わる効率のいい集客手段として語られることがままあるが、客に喜んでもらいたいという真摯な気持ちのないサイトへいくらユーザーを呼び込んでも、見透かされて離脱されるだけだ。客に提供できる価値を磨く想いこそが、呼び込んだユーザーに語る意味のある情報(コンテンツ)をつくり出し、さらに事業を拡大させる好循環の源泉になることができるのだろう。

取材・文:寺田祐也(ナイル株式会社/コンテンツディレクター)

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著者紹介

寺田 祐也(てらだ ゆうや)
寺田 祐也(てらだ ゆうや) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング制作支援)

海外旅行/街歩き/グルメなどを中心に、雑誌・広告制作分野での編集およびライター経験を活かした企画制作を手掛ける。
出版社および編集プロダクションでの紙媒体制作の経験を活かし、企業PRからインタビュー、メディア立ち上げなど幅広く対応。ナイルでは2年間で200以上のクライアントに対してコンテンツ制作を担当している。

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