自社推し禁止が潜在ニーズを問い合わせに導く 「予約ラボ」のオウンドメディア戦略

自社推し禁止が潜在ニーズを問い合わせに導く 「予約ラボ」のオウンドメディア戦略

「愛」に満ちたコンテンツマーケティング施策と企業を紹介する「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」。第8回となる今回は、予約システムの開発・販売事業で業績を伸ばしているReserveLINK(リザーブリンク)のオウンドメディア「予約ラボ」の吉井編集長に話をうかがった。
事業として立ち上げからまもなく7年目、Webサイトはようやく2年目という若いメディアながら、コンテンツマーケティングによって会社とメンバーが成長しているという手応えを感じているという。

オウンドメディア運用では多くの担当者が目標設定と成果のギャップに悩んでいる。しかし、異なる視点から成果を事業へ還元している予約ラボについて、その仕組みを掘り下げて紹介したい。

「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」連載一覧 Vol.1スペースを通じて「新しい体験を売る」~”活用事例集”としてのオウンドメディア「BEYOND」
Vol.2LINEをコンテンツ作りに活用、700超のQ&Aで毎月30人の新規獲得に貢献する「町田美容院の知恵袋」
Vol.3マーケティングは理屈より、人と人とのコミュニケーション~飲食店オーナーを支援する「Foodist Media」
Vol.4「決定者が多いと、つまらないものしかできない」BAKE阿座上さん・塩谷さんに聞くオウンドメディア成功の秘訣
Vol.5インタビュー記事で理解を深めて送客を実現、学生ライターの教育にもこだわる「STUDY HACKER」事例
Vol.6アサヒビールがオウンドメディアで挑んだ、内外とのコミュニケーションの活性化
Vol.7“純度の高いコンテンツ”が結果を生む!DODA「”未来を変える”プロジェクト」の徹底的な環境づくり
Vol.8 「予約ラボ」が数字ではなくユーザーを追い続けたことで得られた意外な成果
Vol.9“店長ブログ”がCVに効く!「NOMOOO」「KURAND」が見つけた実店舗とオウンドメディアの連携

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“予約の「おもしろい!」発見メディア”をコンセプトに掲げる予約ラボ

 

埋もれている価値を発見してもらうことが最重要課題

――「予約ラボ」の目的と立ち上げの経緯について教えてください。

弊社はもともと受託開発が中心の会社でした。その中に予約システムの案件もあり、徐々にパッケージ化された商材を扱うようになってきました。パッケージ型の汎用的な予約管理システムにおいて今は同様に提供する会社が何社かありますが、サービスを販売しはじめた当時は競合も多くありませんでした。

昔はフルスクラッチで開発というようなケースが多かったですが、手軽に導入できるクラウド型のパッケージを販売するようになってからはそちらの人気が高くなってきています。販売は順調ですが、予約システムという製品の特性上、なかなか対象ユーザーの中で課題点が顕在化していないことが多いんですね。
「予約管理 システム」「予約システム Web」などのキーワードで検索してもらえば検索上位にいるので問い合わせいただく可能性が高いです。しかし、そもそも「予約システム」によってサービスが向上する、顧客満足度が高まるという認知が高くありません。そこで、サービスの向上や顧客管理に役立つ事例・ノウハウを紹介することで潜在的な需要にリーチできるはずという仮説にもとづき、「予約ラボ」がスタートしました。


予約ラボのマーケティング戦略イメージ

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――サイトのターゲットとなるのはどのようなユーザーですか?

提供する「ChoiceRESERVE(チョイスリザーブ)」というクラウド型予約管理システムの特徴としては、高機能でセキュリティ面での信頼性が高いという点です。なので、大手企業の方から評価いただくことが多いです。もちろん個人で事業されてる方にも使っていただける製品ですから読者も同様に絞り込んではおらず、予約に関わるサービスを提供されている方全般としています。

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デザイナー出身の吉井編集長。2016年1月から現職を務めている。

――潜在的なターゲットに向けて、どのようなコンテンツを展開していますか?

予約システムを使えばこんなこともできるのか、と気づいてもらえるような記事を配信できるように心がけています。例えば、先日公開された清水建設様のインタビュー記事では、人事の方が1,500人を超える社員の健康診断のスケジュール管理を、予約管理システムの導入で効率化できたという内容を紹介しました。

年に1回の健康診断といっても、建設現場で働く社員の方は日々刻々とスケジュールが変化します。以前は社員と人事が日程変更をその都度メールでやり取りしていましたが、それをクラウドでいつでも誰でも自由に予約できるようにしたら、結果としてかなりの作業量が軽減されたんです。
でもそれを「予約システムで解決できるんじゃないか!?」とは、なかなか気づけないですし、解決法に気づいて「健康診断 予約システム」と検索する人事の方もまだ多くはいないのが現状です。

そこで、そもそも人事の方が現場でどういった苦労をしているのかという話から掘り下げていって、大変な負担になる健康診断を清水建設さんはこうやって効率化できてるという点に気づいてもらう、といったストーリーで紹介しています。そこで予約システムの可能性に気づいてもらえれば、いずれ問い合わせもしてくれるだろうと。

――記事の中では自社製品の名前も出してませんものね?

清水建設さんの課題を解決した予約システムは弊社のサービスなので書きたくなりますが、入れてません。成功事例を紹介する記事として製品へのセールスも入れたくなりますけど、そこをやってしまうとメディアとしての中立性とか信頼性を失ってしまうんじゃないかなというのがあります。
ここで伝えたいのは弊社の製品の魅力ではなく、あくまでも「予約システムが問題解決に貢献する」ということですので。

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健康診断の予約で人事の負担を軽減した事例を紹介。自社製品のPRをあえて控えている。

運用は数字を追わずに人を追う

――予約ラボは、コンテンツのバリエーションが幅広いですよね

予約ラボのコンテンツを通じて、サービス向上やおもてなしの強化に役立ててもらえばいいと考えています。たとえばキリンビールさんの工場見学を取材した記事は、パッと見ると「行ってみた」的な体験記事なんですが、実は予約について詳しく説明するようにしてます。
キリンビールさんのすごいところは、工場に足を運んでもらう前からおもてなしが始まっているんですね。ブランディングを損なわないよう、とてもスムーズに予約ができる。だから、同じように工場見学を始めてみたいって考えている事業者さんが、ほかのところはどうしてるんだろう? と調べた時に参考にしてほしい。「あ、キリンさんは予約システムを入れているからスムーズなんだな。さすが、お客様のおもてなしができてる」と気づいてもらいたいんです。

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予約システムの重要さに加え、おもてなしの大切さも学べるキリンビール工場の体験レポート。

――巧妙ですね。

真面目なことを真面目に書いてもユーザーはあまり読みたがりません。僕がそうなんですけど(笑)。どうせなら楽しく読めて勉強になる方がいいじゃないですか。あまり遊び過ぎても伝わらないですし、ちょうどいいバランスで落としこむのはいまだに苦労してます。

――原稿は社内で作られてますか?

はい。予約ラボの専属スタッフとしては僕だけで、あとは通常業務の間で記事執筆をお願いしているメンバーが6人ほどいます。僕自身がデザイナーですし、本来の業務はライティングと関係ない人間ばかりですので試行錯誤しながらやってます。記事の更新数は特に決めてないですが、月に10記事くらいを目標に更新するようがんばってます。

――PDCAはどのようにまわされていますか?

おもに「KAIROS(カイロス)」というマーケティングオートメーション(MA)ツールを使って、僕たちの仮説というかストーリーが合っているかどうかを編集会議でユーザーごとに足跡を追っています。

体験記事を読んだ後にサービスの問い合わせまできてるとしたら、どのページを途中で見たのか?ヘルプは見たのか?事例は読んだのか?逆にこのページを見てるのにあのページへは行かなかったのはなぜだろう?‥‥とか。僕たちが描いた道筋とどこまでが合っていてどこが違ったのかを1件1件細かくチェックしています。ユーザー心理になりきって振り返るというか。逆に編集会議で数字の話はあまりしません。

――予約ラボを運用して得られたメリットはどのようなものがありますか?

予約システムが十分に機能するためには、サイトにお客様が来た時に「どのボタンから予約できるの?」とか「この内容で予約はできてるの?」とか、ちょっとした不安や疑問を解消してあげる案内の言葉があるかどうかでもまったく違う結果になってしまいます。
だから、そのノウハウを伝えられるオウンドメディアがあるというのは、新規顧客との接点をつくることに加えて、僕らの製品を購入いただいた既存顧客にとっても、実はメリットが大きいということに運用してから気づきました。

また、予約に関するトレンドや取材で得られたノウハウを予約ラボに記事としてまとめてアウトプットすることで、社内での共通認識をつくれているというメリットもあります。記事を読んだ営業担当がクライアントへの提案にコンテンツの内容を活用したりとか、アウトプットを重ねるうちにノウハウがたまっていくので自然と社内全体の業務理解度が上がっていると感じます。

――一般的にオウンドメディアの運営担当者は「費用対効果」の社内コンセンサスを得ることに苦労されていますが、予約ラボさんでは少し事情が異なりますね。

予約ラボとしていくらの効果が出てますとかは計りきれないものとして僕らは考えています。予約ラボがあったから受注できたかもしれないし、無くても受注できたかもしれないし。そこを議論しても仕方ないというか。もちろん検証する姿勢は前提としてあり、解析ツールや数字とにらめっこする時間もありますけどね。

それよりも、社内のメンバーが自分の勉強だったり理解を深めるための取材だったりアウトプットを予約ラボという場所で行えるということに価値があります。実際にラボ(研究所)として試せて、良かったらクライアントへ還元できるわけですから。費用対効果としては、その効果が重要かなと思います。

役立つコンテンツの追求がオウンドメディアの可能性を広げる

――将来的な展望はありますか?

予約ラボを通じて良いサービスを提供されている企業とのつながりがたくさんできたので、その「おもてなし」的なノウハウを必要とする人に届けたいです。

Webに関係ないリアルなコミュニケーション方法として店舗の看板をコンサルティングしている会社さんにも取材したりしてます。「30メートル集客」という、看板を変えただけで売上が何百万円もあがったとかそういうカリスマ的な会社さんです。だからいずれ、僕らが相談を受けた際に「予約システムよりも看板を改善した方がいいんじゃないですか?」という提案もできると考えています。

同じように、CTI技術と連携した電話対応やレジ決済システムなど、予約の前と後ろにある部分も含めてトータルでサービス向上を応援していきたい。「顧客サービスや満足度向上のノウハウなら予約ラボ」くらいの存在になりたいです。

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400店以上で売上昨対比120~150%アップさせてきた30メートル集客のノウハウを紹介。

――最後に、吉井さんにとってのコンテンツマーケティングとはなんでしょう?

読者の役に立つことだと思います。僕自身も、これまでいろんなWebコンテンツを読んできて、とても助けられてきました。だから同じように、自分が知っている情報で世の中が少しでも良くなればいいですね。

予約システムってすごく便利なツールなんですけど、使いこなして初めて良さが理解してもらえるものです。その良さを伝えられるような、読者の役に立つコンテンツを追求していきたいです。

 

読者の役に立つために予約ラボが行っていること

  • 製品の売り込みはせず、読者にとって役立つ情報だけを伝える。
  • 真面目なことを真面目に書かない。楽しんで読ませる。
  • 数字を追いすぎず、ユーザー心理を最優先にして振り返りをする。
  • 読者の役に立つ「価値」は、アウトプットの積み重ねで生まれることを意識する。

Editor's EYE

「予約ラボ」は社内で愛されている。これは取材をして明確に感じられたことだ。

吉井編集長と「予約ラボ部員」たちは今日もどうやったら気持よく予約をしてもらえるか、クライアントがお客様に良いおもてなしができるかを考えている。その純粋な気持ちは、どこかで必ず困っているユーザーに届くはずだ。

PVやシェア数など、コンテンツの成果を課されるオウンドメディアは多くある。もちろん目標を持つことは重要だが、一方で自分たちが信じる情報を発信すれば結果は自然とついてくるという方針でコンテンツマーケティングに取り組み、実際に成果を出している予約ラボの姿勢に、改めて見習うべきことが多くあるのではないだろうか。

取材・文:寺田 祐也(ナイル株式会社/コンテンツディレクター)、實川 節朗(ナイル株式会社/ユニットマネージャー)

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著者紹介

寺田 祐也(てらだ ゆうや)
寺田 祐也(てらだ ゆうや) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング制作支援)

海外旅行/街歩き/グルメなどを中心に、雑誌・広告制作分野での編集およびライター経験を活かした企画制作を手掛ける。
出版社および編集プロダクションでの紙媒体制作の経験を活かし、企業PRからインタビュー、メディア立ち上げなど幅広く対応。ナイルでは2年間で200以上のクライアントに対してコンテンツ制作を担当している。

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