LINEをコンテンツ作りに活用、700超のQ&Aで毎月30人の新規獲得に貢献する「町田美容院の知恵袋」

LINEをコンテンツ作りに活用、700超のQ&Aで毎月30人の新規獲得に貢献する「町田美容院の知恵袋」

愛のないコンテンツマーケティングに未来はない――そんな想いでコンテンツマーケティングに取り組むナイルは、「愛」に満ちたコンテンツマーケティングを展開している企業を追っていく。

シリーズ第2回となる今回は、髪に関する悩みなら何でも解決できるといっても過言ではない、「町田美容院の知恵袋」の宇野和弘氏に話を伺った。

宇野氏は町田にて、美容室「monohair」を経営。その集客手段として、タウン誌に頼るのではなく、オウンドメディア「町田美容院の知恵袋」を運営することを選んだ。掲載コンテンツ700を超えるこのサイトは、どのような戦略で運営され、結果を出してきたのだろうか?

「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」連載一覧 Vol.1スペースを通じて「新しい体験を売る」~”活用事例集”としてのオウンドメディア「BEYOND」
Vol.2 LINEをコンテンツ作りに活用、700超のQ&Aで毎月30人の新規獲得に貢献する「町田美容院の知恵袋」
Vol.3マーケティングは理屈より、人と人とのコミュニケーション~飲食店オーナーを支援する「Foodist Media」
Vol.4「決定者が多いと、つまらないものしかできない」BAKE阿座上さん・塩谷さんに聞くオウンドメディア成功の秘訣
Vol.5インタビュー記事で理解を深めて送客を実現、学生ライターの教育にもこだわる「STUDY HACKER」事例
Vol.6アサヒビールがオウンドメディアで挑んだ、内外とのコミュニケーションの活性化
Vol.7“純度の高いコンテンツ”が結果を生む!DODA「”未来を変える”プロジェクト」の徹底的な環境づくり
Vol.8「予約ラボ」が数字ではなくユーザーを追い続けたことで得られた意外な成果
Vol.9“店長ブログ”がCVに効く!「NOMOOO」「KURAND」が見つけた実店舗とオウンドメディアの連携

「町田美容院の知恵袋」を立ち上げた経緯

――サイトを立ち上げた背景と目的をお聞かせください。

元々、表参道や渋谷の美容室で働いていたのですが、町田で自分の店をオープンすることになり、集客手段としてサイトを立ち上げました。

同じ表参道・渋谷エリアでの開業であれば、独立後も引き続き、既存のお客様にご来店いただける確率は高くなります。一方で、まったく別の町田エリアでの開業となると話は別。新たな土地で、ゼロからの集客が必要です。そんな背景もあり、このサイトを立ち上げました。

――どのタイミングでサイトを作られたのですか?

実際に店をオープンしたのは2015年7月。ただし、店をオープン後にサイトの立ち上げをしていては、スタートダッシュで出遅れてしまうため、サイトづくりはオープン5ヵ月前の2月から開始。美容室としての基本情報は、あとから追加していくことにして、まだ店の住所も店名も決まっていない状態でサイトづくりをスタートしました。

アクセスが集まる状態を先に作り、店をオープンさせるころには、ある程度の集客ができている状態を作り出す。そんな考えがありました。

――ウェブに関する知識はあったのですか?

自分で2、3年ほど、本を読んで勉強しましたが、今、考えてみると見当違いの勉強をしていて、ほとんど知識ゼロに近い状態からのスタートでした。

サイトの構想をウェブに詳しい知人に相談すれば、「それはいらない」「こうしたほうがいい」と辛口のアドバイスをもらうばかり。そこで、頭の中をいったん白紙に戻して、サイトの制作面については、素直にその知人のアドバイスに従ってみる。詳しい人のサポートを得ながら進めていくことにしました。

「集客」ではなく「お客様の悩みを解決する」サイト

――本サイトの運営コンセプトは?

「キャリア14年の美容師が、髪やヘアケアに関する様々な質問に本音で答える」がコンセプトのサイトです。

例えば「美容室で失敗したときはどうすればいいの?」や、「こんな髪質で悩んでいるけど、どんなシャンプーがいいの?」といった質問に、長年の経験で蓄積した毛髪理論や薬剤知識をベースに、美容師本人が髪の質問や悩みに答える。いわゆる、お悩み相談室のようなサイトを目指しています。

頭の中にある知識は、可能な限り記事にしておく。足りない分は、LINEやFacebookなど、SNSで気軽に質問を投げてもらい、僕が一つひとつ回答して補完をしていく。こういった流れでサイト作りをしています。

――お客様からはどのような質問が?

カラーリングや縮毛矯正に関する質問など、さまざまな内容のご質問をいただきます。また、その質問がきっかけとなって、サイト運営や美容室の運営自体に良いフィードバックを返すことにもつながっています。

例えば、美容師をしていると、よく「そちらのお店で白髪染めはできますか?」といった質問をいただきます。でも、実際のところは白髪染めができない美容室なんてほぼない。なぜ「こんなちぐはぐな質問が来てしまうのか?」といえば、ほとんどの美容室で「カラーリング」というメニューはあっても「白髪染め」というメニューや文言、表現がないためなんです。だから、お客様にとっては、白髪染めができるかどうか不安になってしまう。実際にお客様とやり取りをしていく中で、こうした気付きが多くあります。

そこで当店では、カラーリングとは別に、独立したメニューとして「白髪染め」を追加。こうして不安を1つ解消するだけで、予約率をぐっと上げることができました。併せて、白髪染めに関するQ&Aコンテンツも意識的に増やしていく。こうした取組みによって、白髪染めのメニューを選ぶお客様の集客にもつながっています。

――普段からコンテンツマーケティングで意識していることは?

自分自身の強みを活かしたコンテンツづくりを大事にしています。手前味噌ですが、以前勤めていた美容室でも、メーカーとのコラボレーション商品の開発に携わるなど、私は、比較的薬剤の知識や毛髪理論に明るい美容師です。そこで、サイト上では、これまでのキャリアで培った薬剤知識や毛髪理論をメインにコンテンツを作成していく。特に自分が得意とする、カラーリングや縮毛矯正をメインに差別化された独自のコンテンツを作ることを意識しています。

Q&Aコンテンツは、現時点で700個以上。コンテンツを読んでいただいたお客様がその内容に共感し、来店のきっかけ作りができるようになる。そんなコンテンツづくりを心掛けています。

――Q&Aを700も作るのはたいへんだったのでは?

そうですね、作っている最中はたいへんでした。「キャリア14年分の毛髪理論や薬剤知識を、可能な限りすべてサイト上にコンテンツとして残したい」。そんな考えからスタートしたので、結果として大量のコンテンツを作ることになりました。

最初のうちは何もない状態から文章を書こうと思っても、なかなか手が進まない。一方で、問いやお題さえあれば、これまでの経験から、いくらでもうんちくを語ることができます。そこで、まずは自分の頭の中を棚卸しできるような、問いやお題を大量に用意する。そんなところからコンテンツづくりをスタートさせました。

また、いきなりゼロから文章を書こうと思ってもなかなか難しいため、まずは用意したお題に対してお客様に説明するように音声で回答する。それをボイスレコーダーに吹き込んで、ライターさんにテキスト化してもらい、最後に清書する。こんな流れで、コンテンツをどんどん作成していきました。ある程度記事数が入るまでは、休みの日に数百個のお題が入ったノートパソコンをカラオケボックスに持ち込み、フリータイムの安い時間帯を狙って、10時間くらいしゃべりまくる。そうやって音声収録をしていたこともありました(笑)。

――Q&A以外に注力しているコンテンツは?

お客様の施術事例ですね。いわゆるヘアカタログ系のコンテンツですが、アーティスティックな作品としてヘアスタイルを紹介していくというよりも、よりリアルさのある、等身大のコンテンツづくりを意識しています。初めてのお客様にとって、施術事例はサービス内容を疑似体験できる重要なコンテンツ。

また、「僕はこういうアプローチで、こういうヘアスタイルを作ります」という美容師としての色みたいなものが出るコンテンツでもあります。実際に施術事例を見てもらうとわかりますが、事例の多くに私が得意とする重めのボブスタイルが登場します。もちろん、人によって好みは異なるわけですが、新規でご来店いただくお客様の多くは、やはり重めのボブスタイルを好み、それを希望される方が多くなります。こうした価値観のすり合わせが事前にできるという点も、お客様の施術事例コンテンツの良いところです。

また、施術事例の紹介で気を付けているのは、ビフォーとアフター、両方の状態を載せるということです。アフターだけを綺麗な作品として載せても、ビフォーがなければその美容師さんの真の実力は伝わりづらいもの。ビフォーもアフターも、両方をしっかりと載せることで、その差が価値としてお客様にも伝わりやすくなると思います。

 得意分野のコンテンツを増やして成功に導く

――最初からサイトでうまく集客できていたのでしょうか?

オープン当初は、思ったように集客することができませんでした。サイトのアクセス数が予想以上に伸びていかず、「こんなにコンテンツを作ったのになぜ?」という感じでした。

オープンから2週間ほどで、このままではマズいと追い込まれて、タウン誌や大手ポータルサイトへの広告出稿を考えたこともありました。ただ、それで今の状況が改善できるかは不明でしたし、採算も合いそうにないため断念。コンテンツ自体は良いものが提供できているはずだと感じていたので「今あるコンテンツをより多くの人に見てもらうためにはどうしたらいいのか?」と、コンテンツを届ける工夫や努力をすることに頭を切り替えました。

――実際、どのような工夫をされたのですか?

知り合いの読者モデルの方にJリーグのユニフォームを着てもらう。それを写真に撮って、Twitterに投稿する企画は何度か行いました。

Goal.com」というサイトの編集長をしているチェーザレさんや、サッカー関係者の方などに、150を超えるリツイートしてもらうことができ、それをきっかけに多くのサッカーファンの方にサイトの存在を知ってもらうことができました。アウェイゲームへの遠征の合間に立ち寄ってもらうなど、サンフレッチェファンに限らず、日本全国からサッカーファンの方に来店してもらえるようにもなりました。

――このツイートのおかげでサイトが軌道に乗った?

ターニングポイントとなったのは、はてなブックマークが800個くらいついた、独立からの3ヵ月間をつづったブログ記事ですね。SNS上で4,000人以上の方がシェアをしてくれ、1つの記事だけで80,000を超えるアクセスが集まりました。このあたりから、いろいろな人がリンクを張ってサイトを紹介してくれ、アクセス数も一気に伸びていきました。

――ほかに当たったコンテンツは?

自分の得意分野として拡充していた「縮毛矯正」や「白髪染め」「カラーリング」に関する記事は、アクセスを集め、集客につながる重要なコンテンツとなっています。特に「縮毛矯正」関連のコンテンツは、サイト内でも1、2位を争うアクセスを稼いでくれています。

日本人の9割はくせ毛です。一方で、縮毛矯正は日本独特の技術で、美容院の施術の中でも一番失敗が多いメニューといわれています。当然、悩みを抱える人の検索回数も多くなるため、その悩みを解決する記事を用意することで、多くのお客様に「縮毛矯正に詳しい美容師」と認知していただく。結果として、サイト上での集客にもつながっています。

――広告を使ってのサイト集客は?

これまでFacebook広告やディスプレイ広告を試したこともありましたが、うまく攻略することができず、今はリスティング広告くらいですね。ただ、成果を見るとSEOからの流入がほとんどなので、今後も広告運用に力を入れるより、SEOからの流入を増やしたり、それを受け止めるサイトづくりに注力しようと考えています。

また、接触面を増やし、既存のお客様ともつながりを作り続けるという意味でも、LINE@やTwitterといったSNSも積極的に活用しています。まだまだ数は少ないですが、最近ではInstagramで施術事例も紹介していて、徐々にInstagram経由で新規のお客様にご来店していただけるようにもなりました。

サイトはデザインよりもコンテンツ重視しSNSを有効活用する

――1日のうち、サイト運営にどれくらい時間をかけていますか?

今は1日に1時間くらい。それも、毎日平均5、6件くるLINEでの質問に答えることがほとんどです。サイトからの集客が順調で、本業が忙しくなり、サイトをいじる時間があまり取れないということもありますが、サイトを更新するのは、月に3回程度。施術事例をアップするときだけです。

ただ、お客様への施術に集中できることが、美容師にとって一番幸せなことなので、本業に集中できている今の状態は、うれしい限りです。

――サイトのデザインコンセプトは?

最初は、動画が背景に埋め込まれていたり、メニューがすべて英語だったり、「オシャレなサイトを作りたい」という想いもあったのですが、あえてオシャレさは追求せず、極力シンプルな作りにしています。

確かにオシャレなサイトや今風のUIはカッコいいのですが、そこばかり追求すると、ユーザーから見て使いにくいサイトになってしまう。だから表記は「price」ではなくて「価格」で。ページ自体も、重くならないように、シンプルな画像とテキスト中心のサイト構成にする。そうやって、ユーザビリティを重視しています。

また、お客様の大半は普段、パソコンを使わない方がほとんど。そのため、基本的にパソコンでの挙動は無視して、スマホファースト、スマホオンリーのサイトづくりを意識しています。

――サイトの目標数値などはありますか?

具体的に目標のPV数や集客数があるわけではありませんが、新規のお客様を獲得するためのコストがタウン誌や大手ポータルサイトへの広告出稿よりも安くなるように意識しています。例えば、美容師の世界では、月額50万円の広告を出して50人の新規集客をする。競争が激しいエリアでは、新規のお客様1人を獲得するためのコストが10,000円前後というケースもザラにあります。

一方で、当店の場合は、いわゆるオウンドメディアを運営して、しかも広告費のかからないSEOからの流入をメインに集客する。それによって、全国の美容師さんからすると、驚くほどの低単価で、新規のお客様を集客することができています。

そのため、最近はPV数などはあまり意識せず、とにかく良いコンテンツを作ることだけを意識するようにしています。

――具体的なアクセス数と新規の顧客数は?

アクセス数は、だいたい月に10万PVほど。そこから毎月コンスタントに30人前後、新規のお客様にご来店いただき、これまで240人以上のお客様にサイト経由でご来店いただいています。

また、サイトをしっかり読み込み、共感してからご予約をいただく方がほとんどなので、新規でご来店いただくお客様の大半は、その後もリピートしてくださる。もちろん、直前の予約キャンセルやクレームも、ほぼゼロです。

おかげさまで、最近は本当に予約が取りづらい状況で、昔からひいきにしていただいているお客様には「売れっ子になってうれしい反面、予約取りづらくなって嫌なんだけど」って言われるほどになりました(笑)。

――これから多店舗展開も視野に入れていますか?

この先どうなるかはわかりませんが、今のところ、多店舗展開は考えていません。広告費が高騰している今の状況は特にそうですが、基本的に美容院というのは薄利多売なビジネスモデル。そのため、売上を伸ばしていこうと思えば、多店舗展開し、安い人件費で数をこなしていく必要があります。

一方で、私の場合は、今あるサイトによって広告費の負担がほぼなく、無理に多店舗展開しなくても充分に採算が取れる状態が作れています。そのため、必要に応じて求人を出しながら、今の1店舗だけで、やれるところまでやってみたいと考えています。

また、とにかく数をこなしていくというスタイルよりは、一人ひとりのお客様に対して、しっかりと施術時間を確保する。1日の予約数は少なくても、密接なコミュニケーションを取り、悩みを聞きながら、高い品質でより良いデザインを提供していく。そんなスタイルもアリだと思っています。今の状態で十分幸せですし、多店舗展開することだけがすべてではないと思っています。

――最後に、宇野さんにとってコンテンツマーケティングとは?

「町田美容院の知恵袋」はもう一人の自分。自分の分身だと思って作っています。自分の身一つだけでは、提供できる価値の量も、規模も限られてしまいます。

一方で、自分が伝えたいことをコンテンツとして、しっかりとサイト上に残していけば、その制限がなくなります。自分の分身を作り出すことで、より多くの人に、より多くの価値を提供していくことができる。それが「コンテンツマーケティングで重要なことなのでは?」と思っています。

Editor's EYE

サイト内にある膨大な数のQ&Aは、美容師である宇野氏のスキルと経験があってこそ。オウンドメディアを運用する上で、独自のコンテンツは大きなアドバンテージとなり、サイトの差別化に直結する。

アドバンテージがあるとはいえ、それを形にすること、そして持続させることは、決して簡単なことではないだろう。しかし、彼の涼しげな表情からは、その苦労を微塵も感じさせることはなかった。

それは彼が、サイトの運営者である前に、一人の美容師という確固たるアイデンティティがあるからではないだろうか。コンテンツマーケティングは、目の前の数値を追いかけて、目標を達成していくことではない。美容の力で、お客様をいかに幸せな気持ちにさせるか。それが重要なのだ。

彼にとって、目の前のお客様一人を幸せにすることと、サイトを通じて多くのユーザーを幸せにすることは、何ら変わりのない”愛”の形なのかもしれない。

取材・文:三浦利夫(ナイル株式会社/コンテンツディレクター)

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著者紹介

三浦 利夫(みうら としお)
三浦 利夫(みうら としお) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング制作支援)

徳間書店インターメディアやアスキーなど、大手出版社にて雑誌・書籍・ウェブサイトの編集業務を経験。その後、ウェブクルーのクリエイティブグループ マネージャーに就任。保険・生活・比較ポータル・ECなど、さまざまな業界・ジャンルのサイトを運用。

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