【寄稿】Googleアナリティクスの目標到達プロセスをフル活用!カゴ落ちポイントの発見事例

【寄稿】Googleアナリティクスの目標到達プロセスをフル活用!カゴ落ちポイントの発見事例

はじめまして、グラシズの土谷と申します。

Google アナリティクスやヒートマップによる定量分析と、ユーザーテストの定性分析による定量・定性両アプローチからのサイト改善を得意としているアクセス解析コンサルティング会社を経営しています。主にECサイト事業者様や総合代理店様案件のサイト改善のご支援をさせていただいています。

今回は、「Google アナリティクスの目標到達プロセスと、ビューを組み合わせることで、カゴ落ちポイントを詳細分析した事例」をご紹介していきたいと思います。

これは恐らくこのような活用方法をされている方は少ないのではないかというノウハウの紹介になります。カゴ落ちの影響が大きなビジネスに取り組まれている方には、きっとお役に立つと思います。

本記事はユニバーサル アナリティクス(UA)の情報です。UAは2023年7月1日をもって利用できなります。
後継のGA4の情報については「サクッと分かる!Googleアナリティクス4」資料をご確認ください!

Googleアナリティクスのおさらいと現状

そもそも「カゴ落ち」とはどういうものなのでしょうか。

これはユーザがECサイトの申し込み入力フォームやカート画面まで訪問してくれたにもかかわらず、入力ステップのいずれかの画面で離脱してしまうことをいいます。「カゴ落ち」が起きれば、ECサイトの運営者にとっては販売機会が失われていることになります。

この「カゴ落ち」を把握し、商品の購入につなげるようにサイト改善を行うために役立つのがアクセス解析ツールのGoogleアナリティクスです。

Googleアナリティクスはサイトの改善に役立つ強力なツールですが、「カゴ落ち」を防ぐためには、その機能を理解し、正しい使い方をする必要があります。

Googleアナリティクスは、元々は有料のアクセス解析ツールであるUrchinをGoogleが2005年に買収し、無料のアクセス解析ツールとして提供を始めました。

非常に高性能なアクセス解析ツールですが、無料のため充実したサポートはありません。そのため、初心者には難しい面もあります。結果、とりあえず導入はしたけれども「初期設定がされていないアカウント」「不十分であったり誤ったりしている設定がされているアカウント」が多いのが現状です。

そして、Googleアナリティクスを間違って設定してしまうと、正確なデータが取得できないだけでなく、間違った判断を導いてしまうケースがあります。具体的には以下のようなものが誤った設定としてよくみられます。

実際に見かけるNG設定例

  • 目標設定がされておらず、コンバージョンが発生した経路分析や効果測定ができない
  • ECサイトで、自社ドメインとカートドメインが異なる場合、クロスドメイントラッキングを行っておらず、正確な流入分析・効果測定ができない
  • PCサイトと、スマホサイトで異なるトラッキングコードを設定した結果、正確な流入分析・効果測定ができない
  • サブドメインに異なるプロパティを作成し、異なるトラッキングコードを設定した結果、正確な流入分析・効果測定ができない(設計により意図的に設定している場合は問題ありません)

このような設定では、Googleアナリティクスが持つ性能の半分も引き出せない状態です。

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Googleアナリティクスの設定で最も重要な目標設定

Webサイトを作ったからには何かしら達成したい目的があるはずです。その目的の達成状況を定量的に評価できるのがGoogleアナリティクスの「目標設定」の機能です。

これは、Googleアナリティクスの設定の中でも最も重要といっても過言ではない機能です。

目標設定が適切に設定されていると、

  • Webサイトにどのような流入経路から何件の問い合わせが発生したか
  • コンバージョン率がどの程度なのか
  • 1訪問あたりの目標閲覧ページ数を達成した訪問が何件発生したか
  • 1訪問あたりの目標滞在時間を達成した訪問が何件発生したか

などの成果を計測できるので、Webサイトの効果測定が可能になります。

適切に「目標」が設定されているGoogleアナリティクスの画面

Googleアナリティクスで適切に目標を設定すると、サイドメニューの「コンバージョン」-「目標」―「サマリー」から、指定した期間で何件コンバージョンを達成したかを確認することができます(図1)。

図1.目標のサマリーレポート

コンバージョン画面

カゴ落ち状況を把握できる強力な機能「目標到達プロセス」

Googleアナリティクスで、もう1つ重要な機能が「目標到達プロセス」です。

これは、「サイトにアクセスしたユーザが目標を達成するまでにたどる経路を指定し、ユーザがその経路にどこから入り、どこで離脱したのかを記録」できる機能です。(Googleアナリティクス公式ヘルプより引用)

インターネット上のWebサイトではお客さんがどこで不満を感じサイトから離脱してしまったのか、その状況を直接見ることはできません。

例えば、ECサイトの場合、一般的にユーザは商品の購入までに図2のような手順を踏んでいきます。そして「注文方法の指定」の段階で「カゴ落ち」が起きているわけです。ただ、運営者側からは「カゴ落ち」の発生を知ることができません。

しかし、Googleアナリティクスの目標到達プロセス機能を利用すれば、カゴ落ちを詳細に把握することができます。「カゴ落ち」を防げる強力な道具となるのです(図2)。

図2.ECサイトのカートの一般的な流れ

カゴ落ちイメージ

カゴ落ちポイント発見

図3は、あるECサイトのカート画面を目標到達プロセス機能で計測した結果です。

カート画面に訪れた訪問者のうち、「Step4 新規会員登録」画面から「Step5 ご注文方法の指定」画面へ遷移したユーザの割合が41.23%です。これは約半数以上の58.77%にも上る訪問者が「Step5 ご注文方法の指定」以前の画面から離脱し、購入に至らなかった「大きな穴があった」ということを示しています。

しかし、逆にいえば、ここが売り上げを大きく伸ばすことができる重要な改善ポイントになります。この結果を元に、「商品を購入しようとしたユーザが、なぜこのページで大きく離脱してしまっているのか」について原因を調査し、改善策を立てて、この大きな穴を埋めることができればよいわけです。

図3.目標到達プロセス例

目標到達プロセス-カゴ落ち事例

では、図3において、「注文方法の指定」の画面以前のページでカゴ落ちをする訪問者とは、どういったユーザを想定すればよいでしょうか。

例えば、初めてサイトに訪問したユーザとリピートユーザが考えられます。この2つのタイプのユーザはサイトに対する信頼度合いが異なります。それがカゴ落ちにどう影響しているかを知ることが重要です。

また、デバイスによってサイトからの離脱状況が異なることも推測されます。これはPCサイトとスマホサイトとでは使い勝手が異なるために起きるわけです。

このような状況の違いによって、Googleアナリティクスでカゴ落ちが発生する特徴を発見できないかを考えてみましょう。

残念なことにGoogleアナリティクスの「目標到達プロセス」では、仕様により状況ごとで切り分けるフィルタをかけることができません。目標到達プロセスは強力な機能ではあるのですがカスタマイズ性が低いことが難点となっているのです。では、どうすればよいのでしょうか。

任意の条件で目標到達プロセスを抽出する方法

実はGoogleアナリティクスで目標到達プロセスのカスタマイズ性の低さを解決する方法はあります。具体的には「ビュー」に取得したい条件でフィルタをかければよいのです。こうすることでデータの取得が可能となります。今回は以下のようなフィルタを設定してみました。なお、この記事ではフィルタの設定方法については割愛させていただきます。

新規/リピート属性の観点

  • 新規ユーザのみを計測するフィルタ
  • リピートユーザのみを計測するフィルタ

デバイス属性の観点

  • PCユーザのみを計測するフィルタ
  • スマホユーザのみを計測するフィルタ
  • タブレットユーザのみを計測するフィルタ

図4.新規作成したフィルタ一覧

フィルタ

これらのフィルタを組み合わせて、図5のように取得したいビューを作成します。

図5.新規に作成したビュー一覧

カスタムビュー

デバイスによる目標到達プロセスの差

こうして作成したビューで、PC経由のアクセスのみを取得する「【アクセス解析用】PCデバイス」と、スマホ経由のアクセスのみを取得する「【アクセス解析用】SPデバイス」の目標到達プロセス結果を図6のように比較し、傾向を分析してみましょう。

図6.PC経由のアクセスビューと、スマホ経由のアクセスビューの比較

PCスマホのプロセス

図7.離脱ページの分析

離脱場所の分析

◆発見した傾向

  • PCユーザが大きく離脱し、スマホユーザの離脱はわずかである。
  • 離脱状況を確認すると、直接離脱したユーザ(exit)はわずかであり、特定のページへ遷移した後、離脱している

新規訪問ユーザとリピートユーザによる目標到達プロセスの差

さらに離脱ユーザの傾向を特定するためPC経由のアクセスに、新規訪問ユーザとリピートユーザのフィルタをそれぞれ適用したビューを作成してみましょう。すると、PC経由の新規訪問ユーザがサイトから大きく離脱していることが確認できました。

図8.新規訪問者フィルタと再訪問者フィルタをそれぞれ適用したPC経由アクセスビューの比較

PC-新規ユーザVS再訪問

こうして条件を組み合わせて分析を掘り下げた結果、「離脱が発生しているページに対してPCサイトの新規訪問ユーザを逃さないための改善が必要」という課題点が導き出されました。

このように問題箇所とユーザ像を特定できれば取るべき改善施策の精度を飛躍的に高められることが、お分かりいただけたかと思います。

まとめ:Googleアナリティクスの設定を理解する重要性

これまで説明してきたようにGoogleアナリティクスの仕様を理解し、適切に設定をすることができればサイト改善の糸口となるデータを取得することが可能になります。

しかしGoogleアナリティクスの初期設定手順を正しく理解し設定可能なWeb担当者は依然少なく、適切にアクセス解析を実施できるサイトは多くはない状況です。

Cinciのいちしまさんの記事「月間100万PVサイトのためのGoogleアナリティクス導入設定」において、

当社がWebビジネス改善のコンサルの依頼をいただいたときに、「やりたい取り組みはたくさんあるけれども、結局最初にやらなければいけないのは全面的なGoogleアナリティクスの導入見直し」というのがとても悲しいですね。計測基盤の整備をして、そこからしばらくデータの蓄積期間も必要です。ご依頼いただく案件のかなりの割合が、そのような状態です。当社も、企業様のGoogleアナリティクスの導入設定支援だけをものすごくしたいわけではなく、そこから先の「改善」に取り組みたいのです。

と仰っているように、弊社でもアクセス解析のご依頼をいただいたサイトのGoogleアナリティクスが正しく設定されていないために効果的な分析・改善提案ができない案件が多数あります。

そこでこれから、Googleアナリティクスの基本設定方法を数回にわたって紹介させていただきます。

アクセス解析を実施できないサイトを少しでも減らし、効果的なサイト改善施策に取り組むことができるWebサイトを増やすことにつながればと思っています。同時にサイト改善に取り組む皆様の気づきや、考え方のきっかけになれば幸いです。

(※)本記事でご紹介した目標到達プロセスの詳細な仕様は、Googleアナリティクスの大家、衣袋宏美さんの「目標到達プロセスのレポートで、カートから購入までのボトルネックを見つけよう[第56回]」にて紹介されています。

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編集者情報

金子 光
金子 光(かねこ ひかる)
新卒で楽天グループ株式会社に入社。
営業管理として40人規模のチームをマネジメント。その後社員3人のベンチャー企業に入社し新規事業立ち上げを経験。
現在はナイルのマーケティング相談室編集長として、Webマーケティングに従事している。
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監修者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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